転職活動や年収交渉の場面で提示される「年収」は、ほとんどが額面(総支給額)です。しかし実際に銀行口座へ振り込まれるのは、そこから税金や社会保険料が差し引かれた「手取り」です。額面と手取りの差を理解していないと、「年収は上がったのに生活が思ったより楽にならない」というギャップが生まれます。この記事では、額面から手取りを正しく見積もる方法を、年収別の早見表とともに解説します。
額面年収とは、基本給・残業代・各種手当・賞与をすべて合計した、税金や社会保険料が引かれる前の総支給額です。求人票やオファー面談で示される金額は、原則としてこの額面です。
一方、手取りは額面から「社会保険料」と「税金」を差し引いた、自由に使える実際の収入を指します。一般的に、会社員の手取りは額面年収の75〜85%程度に収まります。つまり額面500万円なら、手取りはおおよそ390万円前後という計算になります。
給与明細を見ると、額面から次の5つが差し引かれていることがわかります。
病気やケガの医療費負担を軽減する公的医療保険の保険料です。協会けんぽ(東京都)の場合、おおむね給与の5%前後(労使折半後)が天引きされます。40歳以上になると介護保険料が上乗せされ、負担はやや増えます。
将来の年金の原資となる保険料で、給与の約9.15%(労使折半後)が引かれます。社会保険料の中で最も大きな割合を占めます。
失業時の給付などにあてられる保険料で、給与の0.6%程度です。
その年の所得に対してかかる国税です。課税所得が増えるほど税率が高くなる累進課税で、5%から45%までの7段階に分かれています。毎月の給与からは概算で源泉徴収され、年末調整で精算されます。
お住まいの自治体に納める地方税で、前年の所得に対しておおむね10%(所得割)+均等割が課されます。前年の所得を基準にするため、新卒1年目は住民税が引かれず、2年目から引かれ始める点に注意が必要です。
額面年収ごとの手取りの目安を早見表にまとめました。下の数値は、40歳未満・扶養なし・協会けんぽ東京都の料率を前提とした概算です。賞与を含む年収を12分割して月額を算出しています。
| 額面年収 | 年間手取り | 月の手取り(目安) | 手取り率 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 約238万円 | 約198,000円 | 79.4% |
| 400万円 | 約315万円 | 約262,000円 | 78.6% |
| 500万円 | 約388万円 | 約323,000円 | 77.6% |
| 600万円 | 約460万円 | 約383,000円 | 76.7% |
| 700万円 | 約527万円 | 約439,000円 | 75.3% |
| 800万円 | 約590万円 | 約491,000円 | 73.7% |
| 1000万円 | 約710万円 | 約592,000円 | 71.0% |
上記は一定の前提に基づく概算です。扶養人数、お住まいの自治体、加入する健康保険組合、会社独自の控除などにより実際の手取りは変動します。ご自身の条件での金額は、下記の手取り計算ツールでご確認ください。
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→ 手取り計算ツールを使う(無料)早見表を見ると、年収300万円では手取り率が約79%なのに対し、年収1000万円では約71%まで下がっていることがわかります。これは所得税が累進課税であるためです。課税所得が増えるほど高い税率が適用されるので、年収が高い人ほど税負担の割合が大きくなり、手取りの割合は下がっていきます。
「年収を100万円上げても、手取りは100万円分そのまま増えるわけではない」のは、この仕組みによるものです。年収交渉や転職の際は、額面の増加分がどれくらい手取りに反映されるかを意識すると、より現実的な生活設計ができます。
額面を上げる以外にも、所得控除を活用して課税所得を減らすことで、手取りを実質的に増やす方法があります。代表的なものは次のとおりです。
掛金が全額所得控除の対象になり、その分課税所得が下がるため所得税・住民税が軽減されます。老後資金を準備しながら節税できる制度です。
実質2,000円の負担で返礼品を受け取れ、寄附額の多くが住民税・所得税から控除されます。年収に応じた控除上限額の範囲内で活用するのがポイントです。
生命保険や医療費の支払いも、一定額まで所得控除の対象になります。年末調整や確定申告で申告することで、納めすぎた税金が戻る場合があります。
額面と手取りの関係を理解しておくと、転職時の年収比較や家計の見直しがぐっと現実的になります。まずは自分の年収の手取りがいくらになるかを把握することから始めてみましょう。